お知らせ(こばと)

年長組のお子様をお持ちの保護者の方へ

2022年2月16日

《小学校1年生の子供たちのご両親へ》

著:白山市多賀クリニック院長 多賀千之先生

 4月1日から小学校へ進む子供のいるご家庭では、ランドセルと勉強机が届き、小学校によっては制服も準備されて、春一番といった雰囲気ではないでしょうか。その中で、ひとつ気を付けて頂きたいことがあります。

小学校入学の1学期(5~7月)と夏休み明けの9月に、お腹が痛いとか頭が痛いとかで学校へ行き渋る子供たちが小児科外来を訪れます。長男が多く、次に多いのが長女です。しかし、二番目・三番目や一人っ子でも、ないわけではありません。

入学する子供たちは、新しく始まる生活と環境に期待していると共に、未知への不安も抱えています。加えて、入学の数カ月前から家族に「小学生になるんだから、ちゃんとせいな、しっかりせいな」と繰り返し言われます。子供たちはまだ知らない小学校について、どういう風にちゃんとしないといけないのか、どういうことがしっかりすることなのか想像できません。したがって、言われるほど、不安が募ります。

長男・長女は、次の子が生まれてからずーっと、少しずつの我慢を続けています。長男・長女以外でも、子供なりに我慢はしているものです。この我慢状態が少しずつ続いていても、幼稚園・保育所の時期には大きな問題にはなりません。幼稚園・保育所ではストレスが少ないからです。お遊戯会でひとり踊らずに立っていても、さほど叱られることはありませんし、お休みだって可能です。しかし、小学校に入ると一変します。規律も厳しくなり、全員が同じ行動を取ることを指導され、倍の年齢の6年生と行動を共にします。子供たちにとって、この変化はとても大きなもので、とても大きなストレスなのです。すると、子供たちは精神的に不安定になり、お腹が痛いとか頭が痛いとか言い始めます。これは、「ぼく(わたし)しんどいの」というサイン、親への訴えなのです。子供たちは、ストレスを頭で把握できないので、体の症状として無意識的に表現します。

このような時、お母さんとの“一対一”の時間を増やすだけで、多くの場合、不思議なくらい容易にこのスランプ状態を脱することができます。それは、子供たちにとってお母さんの重要性の占める割合が非常に大きいことを示すと共に、子供たちのスランプの原因の根が深くないということに起因しています。お母さんとの関係が良い回転をし始めることで、すべてのことが良い回転に引き込まれるのです。逆に、原因探しをいくら一生懸命やっても、根が浅いだけにそれが原因であるという確証はつかめないことが多く、また、悪者探しにしかならないことが、往々にしてあります。それまでの子育ての中心がお母さんであっただけに、お母さんが責められることもよく見かけます。結果、お母さんが自信をなくし、子供たちのスランプは一層深くなります。もちろん、原因が特定できれば、その解決が必要ですが、お母さんとの“一対一”も並行して行うとより効果的です。

子供たちに対する両親の役割・家庭の役割とは、子供たちに安息の場所を与えることと共に、子供たちを“自立”に送り届けることです。子供たちが自立する上で、両親、特に母親に甘えておくこと、すなわち“甘える壺”を満たしておくことは、とても重要で基本的なことです。大人から「ちゃんとせいな、しっかりせいな」とか「頑張れ」とか「もう自分でできるでしょ」と言われて背中を押される・尻を叩かれることによって、子供たちは自立していくものではなく、自発的にしたくなって自立するものです。甘える壺を満たすために重要なことは、“一対一”で時間を使ってあげることです。“一対一”でお風呂に入る、絵本を読む、習い事に送っていく、話を聞く、などなど。一方、“甘やかす”というのは、皆さんの物や金を与えることと考えてください。甘える壺が十分に満たされれば、子供たちは必ず立ち直って、また、自分で歩き始めます。子供たちを信じましょう。

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